執筆者:利墨(上海)商务信息咨询有限公司 倉田 瑞穂
東京2020オリンピックは2021年の8月8日に閉会式が行われ17日間の熱戦の幕が閉じました。終わってみれば日本は過去最高のメダル数を獲得し、また開催中に大きな混乱もなく一定の成功を収めたといえるのではないでしょうか。
一方中国でも、2008年の自国開催のオリンピックに次ぐメダル数を獲得し、また陸上の100mで蘇選手がアジア新記録を樹立するなど、スポーツ強国としての力をみせました。今回はそのスポーツ強国を作り出している中国のスポーツ教育についてお話ししたいと思います。
中国での人気スポーツ
下記の「中国内の各スポーツの視聴率」に記載されていますが、「人気=強さ」とはならないのが面白いですね。バスケットボールが1位なのは、中国では学校の運動施設と言えば屋外のバスケットボールコートで、学生が一番参加しやすいスポーツと言われているためです。
一方で、中国の人気スポーツの世界的な強さは、バスケットボール(FIBA:28位)、サッカー(FIFA:71位)とTOP10どころかアジア・オセアニア地域でも最上位ではありません。
中国内の各スポーツの視聴率(現地・テレビ観戦の合算) | ||
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順位 | スポーツ | 視聴率 |
1 | バスケットボール | 34.9% |
2 | サッカー | 10.4% |
3 | 卓球 | 7.1% |
4 | 体操 | 6.8% |
5 | バトミントン | 5.9% |
中国でのスポーツのエリート教育について
オリンピック選抜までの一般的な流れは大まかに以下になります。
※あくまで一般的であり例外もあります。
- ・小学生、中学生から競技用の専門学校に通う
- ・地方大会で良い成績をあげる
- ・市・省代表チームに選抜され全国大会で良い成績をあげる
- ・国家代表チームに選抜されそのトップがオリンピックに出場できる
日本と比較するとより幼少期にスポーツの専門学校に通い、才能を精査し優秀な人を選抜する仕組みがあります。
※選抜の仕組みがしっかりとしているのは、卓球や体操など一部の強い競技に限られるとも言われていますが。
中国のスポーツの専門学校について
対象年齢:
基本は中学と高校に相当する部があるが、一部の競技は小学生に相当する部もある。
入学条件:
それほど厳しくなくが「体格条件」と「体育を専攻すること」の2点が必要。
期間:
3年~5年までと様々。
費用:
5,000~10,000元(年間)
※政府からの手当てがあるため一般の学校と同様。
進学条件:
スポーツの大学に進学するなら(更にスポーツを続けるなら)体育面の成績が必要。
※一般学校への進学も可能。スポーツ面での成績により入学試験での加点あり。オリンピックで金メダルを獲得すると、清華大学、北京大学などトップクラスの大学に入学可能。
スポーツの専門学校の有名人について:
卓球女子のオリンピックチャンピオンの丁宁、男子110mハードルの刘翔、中国人として初のNBAプレーヤーの姚明などが体育学校からスポーツをスタートした。
卒業生の参考エピソード:
水泳を専攻としたある学生は、以下の厳しい環境で練習していた。
- ・朝4時から十数時間も水泳のトレーニング
- ・一日の睡眠時間は5.5時間
- ・正月も休みなし
日本と中国のスポーツ教育の違いについて
「中日児童青少年の体質健康比較研究成果公報」によると、身長などの体格面のデータは中国のほうが優れていたが、スピードやパワーなど体力面は日本のほうが優れているそうです。
理由としては、中国では受験を勝ち抜くために、学校、両親が子供の勉強を重視しているためです。その影響で宿題の量が多く、日本のような部活動(または放課後のスポーツ)の時間がありません。また、近年は若い世代でスマホゲームが流行しており、スポーツよりゲームに熱中している人が多いことも影響しています。
まだまだ裾野が十分とは言えない中国のスポーツ教育ですが、それでも東京オリンピックではメダル数が全世界で2位の実績を残しています。様々な面で目覚ましい発展を遂げている中国ですが、中国のスポーツについても引き続き注視していきたいと思います。
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